人体は誘電体

静電容量結合で人体通信を考える

人体(誘電体)により電界が引き付けられる。

 人体通信は、人体近傍の電界を利用して通信を行う。人体通信の送信機、受信機には、無線通信機器でいうアンテナに相当する電極が、各々2枚ずつ(図では、送信機には電極Aと電極D、受信機には電極Bと電極C)取り付けられている。電極Aと電極Bは人体と対向、電極Cと電極Dは大地と対向し、静電結合している(コンデンサを形成)。

 図のように、空間に配置された人体通信の送信機と受信機は、各々の電極と大地との間に存在する静電容量により、図に示すような電界分布を呈している。

 ここで、対向している送信機の電極A と受信機の電極B との間に、誘電体である人体が介在すると、図3右下の図のように、電極Aと電極Bの間の電界分布が人体により繋がる。


変位電流(閉回路)に情報を載せると人体通信が実現できる。

 送信機の人体に対向する電極に交流信号(高周波信号)を印加すると、電界空間には変位電流が流れる。前項「人体(誘電体)により電界が引き付けられる。」の図の電界空間にこの変位電流を重ねてみると、本項の下図のようになる。送信機の電極Aと受信機の電極Bの間が自由空間の時、送信機の電極Aに供給した変位電流(高周波電流)は、図のように、大地に向かって流れ、「送信機 → 電極A → 大地 → 電極D → 送信機」の変位電流の閉回路を構成する。

 ここで、対向している送信機の電極A と受信機の電極B との間に、誘電体である人体が介在すると、電極Aと電極Bの間の電界分布が人体により繋がり、送信機の電極Aに供給した変位電流は、「送信機 → 電極A → 人体 → 電極B → 受信機 → 電極C → 大地 → 電極D → 送信機」の電流の閉回路を構成する。これからわかるように、送信機から送出される変位電流に伝送したい情報で変調をかけると、その変位電流は人体を介して受信機に伝わり、情報を送信機から受信機に送ることができる。これが、人体通信の原理である。


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