従来の無線通信と人体通信の違いは、「できるだけ遠くまで電波を届かせる無線通信」か、「人体の周りだけを通信範囲とする飛ばさない無線通信」かの違いです。それは、アンテナか電極(アンテナの代わり)かで実現します。
従来の無線通信にはアンテナを用いる。
従来の無線通信は、「できるだけ遠くまで電波を届かせる」ことを目的に、電子回路やアンテナを設計します。
無線通信機器の電子回路は低雑音で高利得な回路設計が要求されます。同時に、近年は無線端末の数が多くなり、混変調対策として、インターセプトポイントの高いミキサ回路の採用も考えることが必要です。
アンテナ設計は遠方界における電界と磁界の振る舞いを考える電磁気学を基礎知識として設計します。アンテナ設計は多くの技術本が出版されています。アンテナは共振器ですので、基本的な電気長は、1/2波長の大きさです。
写真は、従来の無線通信と人体通信を比較するために秋葉原で買ってきたキットを改造して作った「従来の無線通信」評価装置です。
人体通信にはアンテナの代わりに電極を用いる。
人体通信は「人体の周りだけを通信範囲とする飛ばさない無線通信」で、これを実現するために、アンテナの代わりに電極(Electrode)と呼ばれる金属平板(金属片)、または、導電体を用います。電極の寸法は、通信する搬送波の周波数の波長に対し非常に小さく(1/1,000波長 ~ 1/100波長 程度)、そのため、電極自体は通信周波数に共振しないので、アンテナと区別し電極と呼んでいます。
人体通信では、送信機と受信機の各々に電極を取り付け、その電極間の静電結合(2枚の電極でコンデンサを構成)で通信が行われます。
電子部品のコンデンサは、2枚の金属平板を電極として、各々の電極を対向させます。その静電容量を増やすために、2枚の電極の間に誘電体を挟みます。例えば、誘電体としてセラミックを電極間に挟み込んだコンデンサが、セラミックコンデンサです。
人体通信では、送信機に取り付けた電極と、受信機に取り付けた電極の間に挟みこむ誘電体として、人体を入れたと考えると、通信のメカニズムがわかりやすいと思います。
人体通信機器の電子回路には、過大入力でも飽和しないような回路設計が要求されます。無線通信機器ほどの利得は必要ありません。
写真は、従来の無線通信と人体通信を比較するために秋葉原で買ってきたキットを改造して作った「人体通信」評価装置です。