服の上から

心電図をとる

人体通信受信機を用いて、生体情報が得られるか?

 日常生活で座ったり寝たりという行動を通して、意識せずに健康管理ができることが望まれています。心電計も、「接触電極(皮膚に電極を接触させて測定)」から「非接触電極(服の上からの測定)へ」の技術に注目が集まっています。

接触電極心電計イス

 左に示す写真は、人体通信受信機の回路を基に試作した接触電極心電計イスです。電極には100円ショップで購入したステンレス製の靴ベラを用いています。心臓を挟んで左手と右手で電極を触っています。

 簡易型心電計は、すでに市販品もありますが、私が試作した接触電極心電計イスは、人体通信受信機を用いて心電図がとれるかという好奇心で作ってみました。

 右図は、試作した接触電極心電計イスで得られた心電図です。比較的安定したきれいな心電図が得られています。

非接触電極心電計イス

 左に示す写真は、試作した非接触電極心電計イスです。電極には導電性の布を用いています。人体の基準電位検出用と、心臓を挟んで左・右の人体近傍の電界をピック・アップするための合計3枚の電極を用いています。この構成で、服の上から心電図を得ることができました。

 「服の上から心電図をとる」は、私が試作機を公開し始めた2008年頃から、日本各地での講演依頼が増え、「サイエンス ゼロ」、「Newsline」、「Science View」(以上、NHK)、「世の中 進歩堂」(BS-Japan)のTV番組では「人体通信」が特集され、日経エレクトロニクス、電子ジャーナル、日経産業新聞などの複数のメディアで紹介されました。

 右図は、非接触電極心電計イスで得られた心電図です。肺の呼吸による電圧変動も見えています。

 回路を実現するにあたり、非常に高い入力インピーダンスのOPアンプが必要ですが、それらの部品の製造中止が相次ぎ、製品化においての解決しなければならない課題となっています。

人体通信技術を応用した安全運転

 左に示す写真は、人体通信技術を用いて、安心・安全の自動車運転のために何ができるかの実験をしている様子です。人体通信を用いて、運転手の個人認証、荷物を持った手が使えない状況での扉の開錠・施錠、エアコンやオーディオ機器などの制御、個々の座席で別々の音楽を聴くなどが実現できます。

 NHK「News Line」で、人体通信電極をハンドルに組み込んで心電図を計測しているところを紹介していただきました。心電図が取れると、WPW症候群、血栓、不整脈、狭心症、心拍数、ストレス、運動能力、飲酒、居眠り、突然の意識消失発作などの検出ができる可能性があると、医学部の先生からコメントを頂きました。

人体通信技術を日常生活に導入

 日常生活で座ったり寝たりという行動を通して、意識せずに健康管理ができることが望まれています。左の写真は、トイレの便座に電極を埋め込んで、どのような生体情報が得られるかを実験している様子です。

 2010年4月10日放送のNHK eテレの「サイエンズ ZERO」の番組の中で、「日常生活の中で『座る』ところに人体通信技術による心電計を埋め込むと、心筋梗塞の早期発見に役にたつのではないか」ということを、スタジオのみなさんと話し合いました。

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