澄 淳子 のエピソード (その4)
Junko Sumi, Jazz Vocalist

● 怖い物、好き?

 とんでもない!あたしは、怖いの大嫌いです。カートに乗って回っていくお化け屋敷では、入ってから出るまでずっと目をつぶってたことがあります。ジェットコースターは苦手。歓声をあげてバンザイする人たちに混じって、あまりの恐さに両手をあげていたこともあります。それよりももっと苦手なのが怖がり続けること。

 あたしは、250CCのバイクに乗っていますが、もう何年前でしょう。秋になると「バイクに乗れたら気持ちいいだろうな。」あたしは、風がとっても好きなのです。でも怖いだろうなあなんて思ってるうちに冬がきてバイクへの想いも忘れてしまう。でも次の秋がきて乗りたいな怖いな と思う…3年めの秋、あたしの怖さは限界に!そう怖くて怖くて!そうなるとあたしは、あまりの怖さにやってしまうのです。免許をとりました。なんのこっちゃ!とお思いでしょうが、そうなのです。怖いと思うと飛び込むくせがあるのです。

 ニューヨークに留学したのも、もとはといえば、そのくせのせいかもしれません。となりに大きなマンションが建つせいで30万円を手にしたあたしは、 こりゃ飲んじゃうな、じゃあまあニューヨークにでも行ってみるか、ということで、飛行機&ホテル&半日観光がパックになっているツアーに参加。初めての海外旅行です。ホテルについたあたしは、エエイと一人でニューヨークの街へ。だってこわいんだもん。美術館やらを巡って夜ともなると、怖さがつのる。ホテルかえりたい。でも怖さは限界に!そしてまた、一人ライブハウスにでかけるのでした。半日観光で知り合った同じツアーの人からも、ホテルでばったり出会うと「生きていたか」と言われるしまつ。時はクリスマス、ニューヨークは、にぎやかなんだけど冷たく、怖い街でした。やだよ怖いよ怖いよ…あまりの怖さに1年後ここにきて住んでやると決めてしまったのです。考えてみると、あたしが音楽をやっているのも、断崖絶壁から下をのぞいて、あまりに怖くて飛び込んじゃった、とでもいいましょうか?人によっては、それを衝動的とかいうのでしょうけど…どうも人が怖いなと思う時、その中にひかれるものがあるのではないでしょうか。興味もなにもないものを怖いとは、思わないでしょう。フーンてなもんでしょう。だから怖さが限界に達するということは、言い換えれば、やりたくてしょうがなくなるってことでしょうか。ですからどうぞ「怖いなあ」と思うものに出会ったあなた、目を背けずにジッと見てみて下さい。それは、あなたがとってもひかれてるものかもしれませんぞ。ウームあたしにとって音楽は落ちても落ちても底のない絶壁でしょうか。怖いよ〜怖いよ〜ア〜ン。